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妄想と日々の戯言記録
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勝真さん、お誕生日おめでとうございます!!








出仕から帰宅すると子供の泣き声が聞こえてきた。
勝真は深くため息を吐く。
いい加減聞きなれた息子の泣き声だ。
「直真」
勝真はため息とともに御簾をくぐる。
びえびえと泣いている息子は父の声にびくりと肩を震わせた。
「もう!直真はこれだから」
呆れたように姉の桃花が肩を竦める。
「おかえりなさい」と花梨が言うと「ただいま」と勝真は表情を柔らかくして返した。

どうも息子は泣き虫だ。
誰に似たのか、全く見当がつかない。
花梨に零すと「優しい子ですよ」と返される。
「優しいのは良いが、もう少し..直真は貴族の嫡子だぞ?」
と返した。
まだぐずぐずとべそをかいている息子を見下ろし、どうしたものかと考え込む。
この息子に対して姉姫の娘は闊達で、逆ならよかったのに、と想わなくもない。


数日後の出仕が方忌となった。
本来なら、それを避けるために数日前から別宅などに移動しておくのだが、勝真の方忌を知った彰紋が休んではどうかと勧めてくれた。
少し躊躇いはしたが、帰宅して花梨に話をすれば彼女が喜んだので早速休む算段をつける。
本来、方忌で休むのなら自宅にいるべきなのだろうが、花梨が「ぴくにっく」に行きたいと言った。
「ぴくにっく」とは、花梨の世界の言葉で、要は山でのんびりと自然を楽しむのだと彼女が言う。
自然を楽しむと言われてもイマイチピンとこないが、山でのんびり過ごすのも悪くない。
数人の供を連れてぴくにっくに行くことにした。
子供たちも非常に喜び、花梨もはしゃぐ。
二児の母となった花梨も、昔と変わらすよくはしゃぎ、その姿は勝真の心を和ませる。
時々、そのはしゃぎようは心臓によくないが、総じて評価すれば、基本的に彼女が喜ぶ笑顔に癒されるのだ。
「桃花、遠くに言ってはだめよ」
弟の手を引っ張って探検してくると言った娘に花梨が慌てていう。
「だいじょうぶー」
ぶんぶんと手を振って彼女はずんずん歩いていく。
引っ張られている直真は少し嫌がっているが、姉には逆らえずにそのままついて歩く。
「まったく。どうしたらあの臆病なところが治るのだろうな」
最近の勝真の懸案事項である。
「でも、直真は、いざというときにちゃんと頼りになると思いますよ」
「そうか?」
「だって、勝真さんの子供ですよ」
「そうだなー。花梨の子供だもんな」
勝真はどこか納得してしまった。
ひとりでこの世界に来て、理解してくれるものが少ないない中、自分と関係のないこの世界を救ってくれた。
さらに、こうしてこの世界にとどまってくれている。
暫く2人は流れる雲を眺めたり、少し歩いて野山の花をめでたりした。
「しかし、遅いな...」
子供たちが戻ってきたらいけないから、と先ほどまでいた場所が見えるところを散策していた勝真はしばしば周囲を見渡してはそう零していた。
「そうですよね...」
花梨も心配そうに頷く。
「殿」
供の者が遠慮がちに声をかけてきた。
「どうした」
「源頼忠様の使いの方がいらっしゃいました」
勝真と花梨は顔を見合わせた。


取り敢えず、勝真だけが使いの者の案内に応じることにした。
案内された先は、どこかの貴族の別荘のようだ。少し小ぢんまりしているが造りは立派なものだ。
「来たか」
勝真の姿を認めた頼忠が声をかけてきた。
「どうした?というか、よく俺たちが近くにいると分かったな」
「聞いたからな」
そんな会話をしながら案内された部屋に足を運ぶ。
「お父様!」
べそをかいているのは桃花で、直真は横になっていた。
「どうした?」
流石に勝真も慌てる。
「野犬に襲われていたんだ」
「野犬?!」
そんなに山深いところに足を踏み入れていたのかと勝真は驚く。
「直真が...」
はっとして息子を見る。
「擦り傷だ」
「そうか。悪いな。世話になった」
「なに、構わん。しかし、若君は勇敢だな」
苦笑して頼忠が言う。
「勇敢?」
「姫を背に庇って野犬を睨みつけていたぞ」
「直真がか?」
「ああ。昔見た背中を思い出した」
そう言われて勝真にも浮かんだ背中がある。
恐ろしくて、逃げ出したかっただろうに。自分たちは彼女を守る八葉として選ばれたにもかかわらず、彼女に何度守られたか。
やめろと言っても大切な仲間だから、と八葉を守ろうとした彼女。
不覚にも、何度か彼女の背に守られた。
大の男が揃いも揃って情けなかった、と昔を思い出して杯を傾けたこともある。
笑い話であり、苦い思い出だ。
「直真、大丈夫でしょうか」
覗うように娘が問うてくる。
「大丈夫だ」
「けがをされたから、少し熱があるが、大事には至らないだろうと医師が言っていた」
「そうか。そういえば、この屋敷の主は?お礼をしなければ」
「構いませんよ」
不意に聞こえた声に勝真は振り返った。
「泉水?!」
「ええ、私の別荘です。今日は、少し静かなところで過ごしたくて、頼忠に警護をお願いしたのです。若君のお加減はいかがでしょうか」
「ああ、落ち着いている。すまない、今度改めて礼をさせてくれ」
「いいえ。若君が無事だったことで充分です」
「だが...」
「では、花梨殿と一日過ごさせてください」
「断る」
間髪入れずに勝真が返した。
「では、何も要りません。それに、友である勝真殿の若君をお助けすることに何に見返りも必要ありません」
微笑んで言う泉水に勝真は苦笑し、「今度、花梨と共に礼に伺わせてくれ」と言った。
「それなら、お受けいたします」
「言うようになったな」
「ありがとうございます」
昔はおどおどした、自分に自信のなかった泉水がこうした冗談を言えるようになるとは...否、冗談ではなく多分に本気だったかもしれないが。
「車をお貸ししましょう。花梨殿にも使いを出します」
「すまないな。ありがとう」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとうございました」
まだ裳着を済ませていないから気にする必要はないのだが、花梨が良く指摘されているのを目にしている桃花は袖で顔を隠しながらも礼を言う。
「いいえ。お役にたてて光栄です、姫」
泉水に微笑まれて顔を真っ赤にした桃花ははしたないということを忘れて泉水が貸してくれた車に駆け込んだ。
「娘をたぶらかすな」
「翡翠殿ではないのですから、そのつもりはありませんよ」
半眼になって言う勝真に対して泉水が返した。
「彰紋みたいだな」
「光栄です」
何とも似た兄弟だ...
勝真は吐きたいため息を飲んでその代わり重ねて泉水と頼忠に礼を言ってひとまずその屋敷を後にした。




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