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妄想と日々の戯言記録
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というわけで、恒例の勝真さんお誕生日おめでとうな一日です。
といっても、私的に祝日の本日は出勤でしたので、仕事投げ出して定時で帰って来たくらいですかね。
誕生日ケーキはこちら!


そして、こちらも恒例です。
勝花SSです。
どうやら、私は10年前から勝真さんのお誕生日祝いと称して勝花SS書いてるらしいです。
凄いねー。勝真さんはこれからも花梨ちゃんと幸せに過ごしてほしいです。



それでは、本日はこれにて。
では、また☆


拍手ありがとうございました







 長い秋が終わって冬を迎え、それから三度目の春となった。
 下級とはいえ、貴族の嫡子。家を残す必要がある勝真には縁談があった。
 妹の千歳は烈火のごとく怒り、相手が四条の紫姫に縁があると聞くや否や矢のように屋敷を出て四条へと向かって行った。
 いつも屋敷の奥で静かに暮らしている妹の行動とは思えず、勝真はこの変化に苦笑を漏らす。
 彼女が変えてくれた。
 二年前、龍神の、白龍の神子として異世界から召喚され、縁もゆかりもないこの世界を救うために奔走してくれた少女。
 高倉花梨。
 彼女はいつも前を向いていた。
 知らない土地に放り込まれ、猜疑心の塊のこの町の中でずっと戦っていた。
 弱音を吐きたいこともあっただろう。だが、泣き言を聞いた事は一度もない。
 この京を在るべき姿に戻し、龍神の神子としての役割を終えた彼女は元いた世界に戻っていった。
 行くなとは、言えなかった。彼女は突然この世界に召喚されたのだ。家族と突然離れ離れになった。時折家族の事を語ってくれたが、その目はやはり寂しそうであり、だからこれが最善の選択だと思った。
 流石に、あの妹に酷く詰られたのは堪えたが、彼女が幸せならそれでいいとも思った。
 良いと思ったのに、縁談の話が進んでいく中で想うは花梨の事ばかりだった。
 両親は、あの四条の尼君の縁の者と聞いて酷く浮かれていた。その理由は想像に難くない。
 相手の娘に何だか悪い気はする。


「溜息なんてどうしたんだよ」
 不意に声を掛けられて振り返ると、そこには乳兄弟のイサトがいた。
「イサトか。久しぶりだな」
「おう。そういや、結婚するんだって?」
「お前まで知ってるのか」
「まあ、こっちにいる八葉は大体知ってるんじゃないのか? 俺は彰文から聞いたぞ?」
「彰文? どこで会ったんだ?」
「えっと、紫姫の屋敷から出てきたの見つけたかな? お前の嫁さんの嫁入り道具をそろえる手伝いをしているとか言ってたな」
「東宮御自らがか?」
「彰文個人としてだろう? さすがに東宮って立場ではないだろう」
 花梨が元の世界に戻ってからも彰文や泉水、幸鷹など貴族たちは何かと紫姫の事を気に掛けている。健気な少女だったし、放っておけないのだろう。今後後ろ盾が必要なことも出てくるだろうが、その時には彼らが手を貸してくれるはずだ。
 下級貴族の自分では役に立たないだろうが、彼らは誰もが認める貴族なのだ。
「ちょっと待て。紫姫の輿入れで彰文が手を貸すのはわかるが、紫姫と縁のある娘にどうして手を貸しているんだ?」
「……しらねぇよ」
 間を置いたイサトの様子に、何か知っていると直感したが、彼は言わないと決めたら本当に口を開かない。そういう頑固なところも知っているので、これ以上の追及はしないことにした。
 いずれわかる話だ。


 泰継が占じて婚姻の日取りが確定し、そして、その日を迎えた。

 妻となる娘の元に三日通い、その後正式に婚姻が成立することになる。
「兄上、何ですか」
「……何がだ」
 妹に責められた。
「溜息です」
「そうか。それは悪かったな」
「お相手の前ではそんな顔をしないでくださいよ」
「ああ、わかってる」
 あれだけ烈火のごとく反対した妹が、今ではすっかり賛成に回っている。
 余程口が上手い娘らしい。
 まあ、終始喧嘩されるよりマシかと思いながら紫姫の屋敷へと向かった。

 通された部屋は御簾が降りており、中からほんのりと灯りが漏れている。
 するりと御簾の中に入り、娘の顔を目にした瞬間、勝真は固まった。
「お久しぶりです、勝真さん」
 高倉花梨だった。
「ちょ! は?」
 情報処理が追いつかない。
「花梨」
「はい!」
 満面の笑みで返事をする。
「お前、帰ったんじゃなかったのか?」
「帰りました。挨拶をして戻ってきました」
「元の世界に帰る力が、龍神がお前に使える最後の力だったんじゃないのか?」
「もう一回ありました。……あの、勝真さん」
 上目づかいに、不安そうに見上げる彼女の表情を見て、勝真は後悔する。
「私、帰ってきたら迷惑でしたか?」
「いや、違う。迷惑だなんて、そんなことはない。ただ、女々しく諦めきれなかった俺が見ている夢じゃないかと思ったんだ」
 これが現実だというのなら、何と幸福なことか。
「お前が家族を大切にしていたのは、話を聞いて伝わってきていた。だから、この世界に残ってくれとその手を掴むことができなかった。それなのに、お前が居なくなったら後悔したんだ。女々しいだろう?」
 勝真の言葉に花梨は首を傾げた。
「勝真さん。私の話、千歳から聞いてないんですか?」
「残念ながらな」
 数日前に彰文に会ったが、意味ありげに笑って今回の婚姻を祝福してくれたことを思いだす。イサトはきっと彰文から聞いているのだろう。
「花梨、お前が戻ってきたことについては、皆が知っているのか?」
「みんな、ですか? 八葉の皆は知ってますよ」
「そうか……」
 皆が知っているのなら、言いだしっぺはきっと翡翠だろうし、色々と思うところがあって他の者も黙っていたに違いない。もしくは、すでに知っているものと思っていた。
「なあ、花梨。お前はなんでこちらに戻ってきたんだ?」
「勝真さんと一緒にいたくて。あ、でも。私貴族でもなんてもないから本当は勝真さんと結婚は出来ないって聞きました。だから、もし、勝真さんが結婚はダメだっていうなら、その……お邸で働かせてください」
 勢い良く頭を下げた花梨に目を丸くした勝真が「ばかだな」という。
 その声が一際優しくて、花梨は恐る恐る顔を上げた。
「もう諦めなくていいと言われたんだ。今度こそ、お前の手は離さない」
 勝真は彼女の手を強く引いた。
 突然の出来事に目を丸くした花梨だったが、勝真の胸の中にいる事に気づき、今更赤面する。
「というわけだ、諦めろ」
 勝真の言葉に花梨が首を傾げると「おやおや、気づいていたのかい」と物陰から人の姿が現れる。
「翡翠さん?」
「やあ、神子殿。君が勝真殿に万が一にでも振られたらそのままさらって伊予に帰ろうと思っていたんだよ。しかし、残念だ。勝真殿が神子殿に未練たらたらだというのなら、仕方ないね」
「お前も人のことは言えないだろう。というか、覗き見とはいい趣味だな」
「趣味と言うほどでもないけど、得意だね。まあ、また三日後に寄らせてもらうよ」
 翡翠の気配が無くなったのを確認して、勝真は花梨に向き直る。
「花梨、お前は俺が幸せにする」
「勝真さんと一緒にいられるなら、どこにいても幸せです」
 満面の笑みで返された勝真は苦笑を零し、静かに口吻けた。


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